水虫・爪水虫
水虫の症状と原因、治療法
水虫は白癬という真菌(カビ)が足の角質層に寄生することで生じる皮膚感染症です。私たちが一般的に水虫と呼んでいるのは、この白癬菌が足に寄生する足白癬です。この白癬菌が爪に寄生したものを爪白癬といい、このほか体に寄生する場所によって呼び名が異なります。
- 足の指がむずかゆい
- 足指の間の皮がむけていく
- 足指が赤く腫れて水疱ができる
- かかとが硬くなりガサガサしている
- 皮がむけたりひび割れたりして痛い
- 梅雨時に、症状があらわれやすい
など
水虫というと「かゆみ」をイメージされる方も多いです。たしかに強烈なかゆみを伴う場合もありますが、ほとんどの方がかゆみを伴わない水虫を発症することも多く、単なる湿疹や乾燥肌だと勘違いしてしまう方が少なくありません。そのため、水虫と気付かないまま放置して、症状を悪化させたり、人に感染させてしまうことがあります。
水虫と似た疾患
靴内の環境や消毒液・外用薬などが原因のかぶれ(接触皮膚炎)や、春や秋に生じやすい汗の出口周囲に炎症を生じる異汗性湿疹、カンジダという真菌によって起こる皮膚カンジダ症などがあります。
患者さんが症状から判断するのは難しいため、まずは一度皮膚科を受診するようにしましょう。水虫の検査は、患部の角質層を削って顕微鏡検査を行うことで簡単にわかります。所要時間も数分で終わりますので、お気軽にご相談ください。
塗り薬をつかった水虫の治療
水虫は外用抗真菌薬を使った薬物療法が基本となります。医師の指示に従って正しく塗ることで、白癬菌を殺菌して発育・増殖を防ぎます。外用薬には液体、軟膏、クリームなど、さまざまなタイプがありますので、患者さんの皮膚の状態に合わせて処方します。
薬を塗り始めると、症状が軽減していきますが、角質の奥深くに入り込んだ白癬菌が生きていることがあります。角質層が完全に入れ替わるまでの期間、1~2か月以上は薬を塗ることが重要です。くれぐれも自己判断で塗るのをやめないようにしましょう。水虫は根気よく治療を続けることが大切です。
爪水虫の症状と原因、治療法
足水虫が気になって皮膚科を受診した際に、爪水虫も併発していると診断を受ける方は少なくありません。長い間、足水虫を放置していると、足に寄生していた白癬菌が爪の中にまで入り込んで、爪水虫を発症します。
- 爪の表面が黄色や褐色に変色している
- 爪の縦じわやデコボコが目立つ
- 爪が白っぽく濁り、厚みが増している
など
爪水虫の場合は、ほとんどの方が足水虫を併発しているため、足の白癬菌を塗り薬で殺菌しても、爪から白癬菌が移り再発を繰り返してしまいます。つまり、爪水虫を治さない限り、堂々巡りが続いてしまう厄介な感染症です。
内服薬による爪水虫の治療
爪は形状次第で外用薬(塗り薬)が浸透しにくいことがあるため、内服薬を処方します。治療期間は患者さんによって異なりますが、爪全体が白濁しているような症例の場合、1年ほどかかります。爪の根本からきれいな爪が生えてきて、ゆっくりと病状が改善していきます。飲み合わせの問題で内服出来ない場合や爪水虫になっている爪の数が少ない場合、外用を選択する場合も多くあります。
爪水虫も足水虫と同様に、自己判断で治療を中止しないようにすることが重要です。治療中、なにか気になることがあれば、なるべく早めに皮膚科を受診して、医師の診断を受けましょう。
巻き爪(陥入爪)
爪が変形しておこる代表的な疾患が巻き爪(陥入爪)です。足の親指に生じることが多いですが、そのほかの指でも起こる場合があります。軽度であればとくに症状がでないこともありますが、そのまま放置すると痛みや炎症を伴い、痛みで歩くのが困難になることもあるため注意が必要です。
巻き爪の症状と原因
巻き爪は爪の端が皮膚側に丸く巻き込まれたり、ホチキスの針のように爪の角が直角に強く折れ曲がったりしてしまう状態です。痛みを感じない方もいらっしゃいますが、運動したり長く歩いて靴が爪に当たったりして圧迫されると、痛みを覚えることがあります。
巻き爪の主な原因は、
- 不適切な爪の切り方
- 合わない靴などによる圧迫
- 外反母趾などの足の変形
があげられます。
なかでも多いのが、不適切な爪の切り方(深爪)によるものです。深爪すると爪甲の縁は内向きになりやすく、爪が伸びてきたときに先端方向に伸びることが困難になります。
巻き爪の状態を放置すると、爪の端が爪溝の皮膚に食い込み、組織を損傷して炎症を起こすことがあります。細菌感染が生じやすくなり、発赤や腫れの症状、肉芽(にくげ;傷を治すために盛り上がってできる粒状の新生組織)の形成などが起こります。
さらに爪の周囲組織が肥厚してさらなる爪の変形に繋がってしまうことがあります。また、炎症が長期にわたって続くと、爪が弱くなり大きく翼状に広がって治療が困難になることもあるため注意が必要です。
巻き爪(陥入爪)の治療
皮膚科では、症状が軽度の場合はテーピング等で保護し、中等度以上の場合はワイヤーやクリップなどを用いて爪の矯正を行う治療が選択されます。皮膚科では、症状が軽度の場合はテーピング等で保護し、中等度以上の場合はワイヤーやクリップなどを用いて爪の矯正を行う治療が選択されます。
当院では巻き爪マイスター®️という矯正器具を導入する予定です。治療をはじめると痛みが徐々に緩和され、爪の形が改善していきます。
重症例の場合は、足の指全体を麻酔した上で、部分的に爪を切除(部分抜爪)したり、爪全部を切除(全抜爪)することを患者さんと相談した上で選択することもあります。ただ、足の血流が悪い方にはやってはいけない処置なので、慎重に手術をするか検討することが必要です。治療をはじめると痛みが徐々に緩和され、爪が巻かないで生えるようになっていきます。
巻き爪(陥入爪)でお悩みの方は、痛みが生じると爪を切って対処しがちですが、皮膚に食い込んだ部分の爪を切ることは一時的な対処にしかなりません。爪が伸びてくると、症状はより酷くなってしまう悪循環に陥ることがありますので、注意が必要です。
まずは一度、皮膚科を受診して悪化している爪の状態を確認し、適切な爪のケアを知ることからはじめましょう。
たこ・魚の目
足裏の皮膚(角質)が厚くなる症状
靴を脱いだ時に、指や指の付け根、足の裏の皮膚がかたくなったりしているところはありませんか?もしかするとそれは、角質がかたくなる「たこ・うおの目」かもしれません。
たこ・うおの目は、放置していると皮膚がどんどんかたくなり、痛みで歩けなくなってしまうこともあります。また痛みだけではなく、足裏の皮膚にゴツゴツとしたものができてしまい、素足になるのが恥ずかしいという女性も少なくありません。なるべく早めに対処しましょう。
たこと魚の目の違い
たこは表皮で角質層が盛り上がった状態です。皮膚の外側に向かって厚くなるのが特徴です。一方で、うおの目は角質が増殖して下に向かい、くさび形のように真皮に食い込んだ状態になります。
ときに見分けが付きにくいケースもありますが、たこ・うおの目はそれぞれできやすい場所があるため、発症した位置によってどちらの症状なのかを判断することもできます。
たこ
たこは医学用語では胼胝(べんち)といいます。同じ場所に何度も圧力が加わることで、角質層がどんどん厚く硬くなり、黄色味を帯びて盛り上がった状態になります。たこの多くは足裏や足の親指の付け根(母趾球:ぼしきゅう)、小指の付け根(小趾球:しょうしきゅう)にできますが、長時間正座をすることが多い方は、足のくるぶしに座りだこができることがあります。
硬い骨の上あたり、比較的広い面に対してできることが多く、痛みはほとんどなく、むしろ感覚が鈍くなっている状態に近いです。しかし、長時間歩いたときなどは、炎症によってジンジンと熱く焼けるような痛みを感じることがあります。
うおの目
うおの目は医学用語では鶏眼(けいがん)といいます。くさび形の小型の角質が増殖して点になり、肥大すると真ん中に芯(核)ができるのが特徴です。この芯が神経のある真皮層に達すると、外部から刺激を受けたときに激しい痛みを感じます。
うおの目も、慢性的に加わる圧力によって生じますが、時に圧力が加わらない部位にも生じます。気になる皮膚症状があれば、早めに皮膚科を受診しましょう。
たこ・うおの目の原因
- 骨の異常(外反母趾など)
- 足のアーチの崩れ(開帳足)
- 歩き方の癖
- 足に合わない靴
など、さまざまな原因によって発症します。
これらの足の状態によって、地面から受ける圧力が過度に加わりやすくなったり、靴に当たりやすくなったりして、たこやうおの目ができやすくなります。また、足先の細い靴を履いたり、ヒールやミュールを履いて足が前に動くことによって、摩擦が生じてしまうことも要因となることが多いです。
たこ・うおの目の治療
痛みがなく日常生活に支障がない場合は様子を見ても良いですが、皮膚科で早期に治療を開始することで痛みを感じずに済むこともあります。
一方で、痛みがあるうおの目や、かたく肥厚したたこは、皮膚科で治療することが推奨されます。くれぐれも自分でカミソリやカッターで削ったりしないようにしましょう。皮膚を削りすぎてしまうと、そこから細菌が入ってしまい、皮膚や皮下組織に炎症を起こしてしまう人が少なくありません。特にうおの目は、芯をほじくり出そうとして深く削りすぎてしまい、炎症を起こしやすいため注意が必要です。
治療方法としては、
- 角質を溶かす塗り薬、貼り薬の使用
- カミソリやメスで削る(鶏眼・胼胝処置)
があり、組み合わせることもあります。
たこやうおの目は削りとれば、一時的に痛みは治まりますが、再び同じ場所が圧迫されることで再発してしまうこともあります。そのため、なぜ発症してしまったのか原因をつきとめて、圧力や摩擦を軽減することが大切です。